ホンダのハイブリッド

つい先日、インサイトの販売終了がアナウンスされました。ヨーロッパでの販売終了が発表されて、「環境にはハイブリッドよりディーゼルのお国柄だからなぁ」なんて感想を持ったのもつかの間、日本でもその役目を終えたようです。

ハイブリッド車と言えば、トヨタプリウスとホンダのインサイトは並び立つライバルだったはず。それが、かたやベストセラーの国民車、かたや生産終了の憂き目に。この差はなんなんでしょう。

独断ですが、命運を分けたポイントはただ一点。値段や燃費の差じゃありません。おそらくそれは、後部座席の居住性です。プリウスインサイトも発売してまもなく試乗させてもらいましたが、運転して楽しいのはもちろん、後部座席の乗り心地でさえもインサイトの勝ち、というのが私の印象でした。ただ、189万円からという思い切った値段設定も、トヨタが予想外に205万円のプリウスをぶつけて対抗したことで優位は揺らぎ、逆にハイブリッドの肝でもある燃費でプリウスに大きく差を付けられていました(インサイトの10・15モード燃費で30.0km/Lに対して、プリウスは10・15モード燃費で38.0km/L)。でも、それだけでこの差になったかと言えば、NO、でしょう。どちらも、当時すでに下火であったセダンというかハッチバッククーペのような形をしており、ミニバンやより広い室内空間をもつ軽自動車を求める市場のニーズには応えられないものだったと思います。特にインサイトは、セダンからの乗り換えとしても後部座席のスペースは狭く、実質2プラス2のスポーティーカーのような立ち位置になってしまっていました。それでも、初代インサイトが2シーターであったことを考えればよく頑張ったとも言えるのですが、プリウスは普通に座れ、頭上に余裕もあるのです。後部座席に座った段階で勝負はあったと言っても過言ではないでしょう。また、そもそもミニバンに流れなかった保守的な層がホンダよりもトヨタに多かった、というユーザーの特性もあったかと思います。

もちろん、それはホンダも実感したはずで、その後はホンダの顧客のボリュームゾーン、フィットやフリードといったスペース重視の普通車にハイブリッドモデルを追加し販売台数を伸ばしました。また、ハイブリッド専用車では、他と競合しないホンダらしい発想でスポーティーカーCR-Zを仕上げました。電気をターボに代わる補助動力装置と考えてトルクを稼ぎ、スポーツカーの文法に則って後部座席はおまけと割り切り、軽く、低くしたのです。また、普通のセダンが売れない日本ではアコードをハイブリッド専用車として生まれ変わらせ、その性能は遂にトヨタを超越したといっても良いレベルにまで到達しました。

こう考えると、インサイトの興亡は決して無駄ではなく、ホンダだけがトヨタに対抗できるハイブリッドカーを我々消費者に与えてくれるメーカーとして生き残り、巨人トヨタを脅かし続けてくれていると言えます。ホンダのハイブリッド。未だ購入には至りませんが、さらなる発展を期待して、結びとさせて頂きます。